理事長所信

はじめに
1951年、戦後間もない復興期に能代青年会議所は誕生しました。多くの青年たちの熱い想い、積極的な行動力により、全国でも23番目という早さでの設立でした。そしてこの72年間、時代時代の青年の力により、地域のための事業が数多く行われてきました。中にはおなごりフェスティバルや天空の不夜城といった地域を代表する事業もあります。私たちはこれからも地域に寄り添い、地域にとって必要な存在であり続けるべく、運動・活動を推進してまいります。
私は、青年会議所は地域を良くするための装置だと考えます。青年会議所で頑張っている仲間を助けると、仲間との絆が深まるだけでなく、それが自然と地域のためになる素晴らしい装置です。この装置を最大限活かせるよう、2023年度も邁進してまいります。
ITリテラシーを育む育成事業
青年会議所ではこれまで様々な青少年育成事業を実施してきました。昨今ではスマートフォンやインターネットの普及により、接する機会が減った自然体験や農業体験などの事業も行ってきましたが、スマートフォンやインターネットは今や切っても切り離せない生活の一部となっております。私自身、IT系の会社を経営しているということもあり、便利な部分で大いに恩恵を受けております。しかしその反面、犯罪等に巻き込まれる恐れもあり、危険な側面ももっていると認識しております。私は、これからを生きる子供達には、正しいIT教育が必要だと考えます。人口減少、労働力不足が叫ばれる私たちの地域の未来にITは 欠かせない技術です。しかし、何よりも、子供達の安全を守っていかなければなりません。これまでの青年会議所にはなかった、新たな時代を生きるための力を育む事業を行なってまいります。
グローバル教育を推進する育成事業
2045年、能代市の人口は約27,000人になると予測されています。つまり、このまま何もしなければ約20年後には消費や売上が半分となり、存続している企業やお店も約半分になるであろう、激動の未来が待ち受けています。しかもその27,000人の約半分が65歳以上の高齢者です。現在、日本だけが世界の経済成長から取り残されており、諸外国の多くの職種で新卒1年目の給料が600万円以上という状況の中、日本の有名企業の新卒でもずっと300万円のままです。外国人が日本で働く価値は低く、外国人労働者も来ない、日本の労働力も他国へ流出するという未来が予測されています。だからこそ、この20年後を生きる子どもたちに必要な教育は、グローバル教育だと考えます。この能代山本地域においても、世界と渡り合える人材の育成、外国人観光客を誘致できる土壌の構築をしなければこのまちは消滅してしまうと危惧しています。高度経済成長期、多くの企業が物価の安い中国に工場を建てて製造をしましたが、今度は逆になり、物価と人件費の安い日本で製造するという悪い意味での世界の工場になるかもしれません。
ダイバーシティマネジメントを学ぶ研修事業
ダイバーシティマネジメントとは、人材の多様性を活かして事業を成長させ、組織を強化しようとする施策のことです。人材の多様性、つまりダイバーシティには、年齢や性別、人種などの目に見える属性だけでなく、価値観やスキル、働き方などの目に見えない性質も含まれています。インターネットの発展と人口減少により、個人個人の存在感は増していると思います。変化の激しい時代において、同一性、同調性の強い組織では時代の変化に対応できず、それぞれの存在感、多様性を活かし、包括的なマネジメントにシフトしていく必要があると考えます。
防災意識の向上
どんなに素晴らしいまちづくりをしていても、災害等により一瞬で無に帰す時もあります。能代の歴史を辿ってみても、多くの災害を乗り越え現在に至っております。私は昭和58年生まれで、生まれた年に日本海中部地震が発生しました。地震発生からちょうど40年の年となります。40年を機に再度防災意識の向上を図っていきたいと思っております。近年は気候変動の影響からか、大雨による洪水や土砂崩れなど、日本各地でこれまでにない災害に見舞われております。たとえ災害が起こったとしても、速やかに復旧できるよう、防災意識の向上が地域の強靭さをつくっていくと考えます。災害が起こっても大丈夫だという強靭さが人々の行動の基盤となったとき、より活発な活動が推進されると考えます。
誇りと、仲間と、地域と共に行う拡大運動
青年会議所は、青年経済人の団体として唯一無二の団体だと思います。これまで築き上げてこられた先輩方との交流、県内だけでなく、全国各地の志を同じうする同志との交流、これは入会前にどんなに言葉で説明されても、入会して実感するまでは分からないと思います。日本青年会議所72年の歴史に育まれた共通認識は、全国共通でのものさしとなります。委員長経験者は事業構築、議案作成の大変さが分かっている、副理事長や出向者はこういった経験をしただろう、役職だけでその人がどういった経験をしているのかまで推察がつき、初対面でも一気に人間関係の距離が縮まります。もちろん一生懸命その役職を頑張ったというのが前提です。頑張れば頑張った分だけ自分の成長となり、自分の価値を高め、しかもそれが自然と地域のためになる、素晴らしい団体だと思います。
しかし、そんな素晴らしい団体でも、人口減少、企業数の減少などから会員数は減少しており、数年後には存続の危機に立たされております。一生懸命頑張る後輩のためにも、そして地域のためにも、青年会議所は無くしてはいけません。共に地域を良くする仲間を一人でも増やすため、会員拡大に力を入れていきます。
出向者の支援
本年は秋田ブロック協議会会長を能代青年会議所から輩出しております。2017年度佐々木暁先輩以来となります、勇気ある決断をされた佐藤裕之君に敬意を表します。能代山本だけではなく、秋田県全体のことも、ブロック会長輩出LOMとして率先して協力し、支援してまいります。こういった出向は、青年会議所の魅力の1つだと思います。自分の成長と、新たな仲間との出会いが、必ずや地元に還元されることでしょう。
感謝の心をもって
人が生きていくうえで大切なことは、感謝の心をもつことだと思っています。我々は一人の力で生きている訳ではありません。缶コーヒーの缶を作る人、イスやテーブルを作る人、建物や道路を作る人、様々な人のお陰でこの生活が成り立っています。ありとあらゆるすべての物事に対し感謝の心をもって生きていくことが大切だと考えます。それは環境に対しても同様です。今ここで生きていられるのは、両親を始めとする家族や、友人、職場、地域があってこそです。多くの人がこの感謝の心をもって生きるようになった時、様々な地域の課題は自然と解決していくのではないかと思っております。私自身、東京から秋田へ帰ってくる時、地域への感謝、両親への感謝から、自分のためよりも誰かのためという思いが強くなった時に、地元へ帰る決断につながったと思っています。感謝の心が愛郷心へつながり、愛郷心が自分よりも周りのためという精神につながると考えます。
結びに
青年会議所はボランティア団体ではなく、社会変革団体だと先輩から教わりました。ごみ拾いで例えるならば、ごみを拾うのが目的ではなく、ごみを捨てないためにはどうしたらいいかを考え、実行していく団体だと。もちろんごみを拾うことも大切ですが、物事の本質を追求し、問題を根幹から解決していけるよう日々試行錯誤してまいりました。とても大事な考え方だと思っております。私はこの考え方に、スローガンである遊学遊働の精神をプラスしていきたいと考えております。遊ぶ時には創意工夫をするのに、仕事には創意工夫しない、遊ぶ時は熱中するのに、仕事には冷めている、このような人が多いように見受けられます。 楽しみながら、ワクワクしながら問題解決に臨む、遊ぶような感覚で試行錯誤し、課題を解決していく、こういった精神が青年会議所にも必要だと考えます。青年会議所の活動は大変そうだと思われている方も世間には多いです。実際に大変なこともたくさんありますが、それ以上に楽しいということを広めてまいります。我々が楽しみながら地域のための事業を行ない、楽しみながら生活をする。それが会員拡大にもつながり、さらなる発展につながると私は信じています。
感謝の心をもって、仲間と共に地域のために行動してまいりますことをお誓い申し上げ、2023年度所信表明とさせていただきます。